第1回
接遇・マナーのレベルアップ
「最近の若い人達は、接遇が悪くって。これからの病院はこれじゃだめなんですけどね。私たちとは考え方が違いすぎちゃって。」
なんていう話を看護部長や師長クラスからよくお聞きします。そんな方々もペットボトルのジュースが配られると何の抵抗もなく、キャップをあけ、口を付けてジュースを飲まれます。
「昔お嬢さんだった頃は(笑)ラッパ飲みは、“はしたない”なんていわれたんじゃないんですか?」と私は意地悪な質問をします。お嬢さんだった頃なんて話ではありません。ほんの10年くらい前までは、飲み物はコップに移して飲むほうが当たり前だったはずではないでしょうか。
「あなたたちだってできていないじゃないか」ということを言いたいわけではありません。接遇、マナーという面で昔から変わらないもの、変えてはいけないものもあれば、生活スタイルや社会環境の変化などから当然のごとく変わっていくものもあるということです。
ですから、年代によって考え方や行動スタイルが違うのは当然ですし、接遇やマナーは「正しい」「正しくない」という二者択一の問題ではあり得ないことが多いということです。
医療・福祉施設における接遇やマナーは、今まさに過渡期といえます。少し前までは、「様」が正しいのか「さん」が正しいのかという話題は至るところで耳にしました。
はっきりいえばどちらでもいい。
大切なのは「自分たちが何を望まれていて、何を提供しようとしているのか」です。
何が正解かという切り口では答えが出ないことがたくさんあります。
医療・福祉施設で働く方々は、そのアカデミックさから問題解決の糸口をマニュアルや資料に求めすぎる傾向があります。
接遇やマナーについても敬語が正しいか間違っているか、つまり白か黒か。ここに答えを求めがちですが、大切なのは患者や利用者にとってどのように受け止められるか、受け止められたいかです。
方針は決まっていて、実行の判断は各職員に任せるということができたら理想的です。ただ、すぐにそこまで進むことは不安もあるでしょうから、まずは「接遇はかくあるべし」を伝えることにこだわりすぎず、どうしたらよりよいサービスができるのかという観点で接遇やマナーについて、職員の皆さんで話し合ってみませんか。マニュアルや資料や過去の経験の中に必ずしも答えがあるとは限らないのですから。
最後にヒントをひとつ。
私はよく、医療・福祉施設での研修で、「自分が受けてよかったサービスと嫌だったサービスをあげてみてください」と質問します。これが、意外に答えが返ってきません。通常、自分がサービスをすると同等かそれ以上に、いろいろな場面で自分がサービスの受け手に回っているはずです。でも、それが仕事に活かされないのは寂しい気がします。
コンビニの店員さんの笑顔、スーバーの店員さんの担当以外の商品知識、ラーメン屋の店員さんの威勢のいい挨拶、自分が気に入らない商品を「似合いますよ」と盛んに勧めてくるデパートの店員さん、横柄な態度が見られる役所の役人さんなど、自分たちのサービスを振り返り、学ぶ機会は日常にごろごろと転がっています。そうしたことを題材にして、年代や役職を抜きに皆で話し合う研修も効果絶大です。
冒頭の看護部長や師長のような悩みを抱えていらっしゃる方も、年代に関わらず意外な共通認識があることに気がつくかもしれません。これからの医療・福祉施設に大切なのは、接遇やマナーを「サービス」という広い視点で考えることではないでしょうか。